愛するあの人と相思相愛になるため、生まれて初めて魔術に手を染めました。
ACさんとアンテラ・サチェロ様について詳しく知るまでは、正直、怪しい会社だと思い込んでました。でも、今では魔術に対する自分の理解不足を心から恥じています。アンテラ様は本当に世界最高峰の白魔女だったのですね。だって、私の願望をこんなに素晴らしい形で叶えてくださったんですから。私が望んだのは、片想いの彼と相思相愛になることでした。
その夢をどうしても成就させたくて、ACさんから送られたこの魔術人形「マジックドール」に向かって、毎日たっぷりとお祈りを続けていたのです。効き目が現れたのは、祈り始めて10日目だったと思います。社内のふたつの部署の連繋で新しいプロジェクトの立ち上げがあって、そのサポートに抜擢されたのですが、何とプロジェクトリーダーが片想いの彼でした。私の仕事は部署間の連絡係兼彼の秘書を務めることだったので、その翌日からほとんど2人一緒に行動することになってしまいました!
恋愛は親近感から生まれるって言いますけど、社内でずっと一緒に過ごすうちに、私に対する彼の態度が少しずつ変わっていくのが分かりました。もちろんその間も欠かさずお祈りをしていましたので、絶対にそれが効いたのだと思います。だってそれまでは鼻も引っ掛けてくれないような態度だったんですから。彼の好意がアンテラ様の魔術の効果であることも十分に承知し、あまり調子に乗らないように気をつけながら、相手のプライベートについて少しずつ聞き出すことにも成功しました。
彼が資産家の御曹司であること、ゆくゆくは退社して父親の会社を引き継ぐことも初めて聞かされました。もちろん私は彼という人間自体を愛しているのであって、玉の輿の結婚や財産に目が眩んだわけではありません。でも、もし結ばれることになったら未来の社長夫人…そう思うと軽いめまいさえ感じました。
プロジェクトの終了後も、彼と会う機会が減ることはありませんでした。退社後、毎日のようにデートに誘われ、夢のような毎日を過ごしました。そしてついに婚約、結婚式の日取りも先日決まりました。繰り返しますが、私はアンテラ様の人形にお祈りをしただけなのです。たったそれだけのことで、こんな途方もない夢が叶ってしまうなんて…。アンテラ様、貴女はいったいどういう存在なのですか?本物の魔女のパワーに今さらながら心が震えています。
(柳瀬ふうか・25歳・OL・神奈川)